特集

2022.03.22

日常の食卓に寄り添うビール 丹後王国ブルワリー

 近年日本国内で盛り上がりを見せているクラフトビール。ビールメーカーは大手から小さな工房まで幅広く、その土地の風土と作り手のオリジナリティを掛け合わせた個性豊かなビールが数多く誕生している。また、消費者側もその違いを楽しみながら自分の好みを探す。クラフトビールのマーケットは流行を超えて日本の食文化の一つになりつつある。

 実は、京丹後におけるビール製造は1997年からの歴史がある。京丹後市弥栄町に位置する道の駅
丹後王国「食のみやこ」でビール製造を行なう株式会社丹後王国ブルワリーは、地域商社として卸業や販売業を行なう傍ら、使用する素材と独自のスタイルにこだわったビールの安定した生産技術を培ってきた。2017年頃からは日本各地への卸にも力を入れ、全国に同社のビールファンを増やしている。

 「丹後地域の豊かな自然環境や素材を生かしたビール作りは面白いですね」と話すのは、株式会社丹後王国ブルワリー 代表取締役社長の中川正樹さん。同社のビール製造への想いとこだわりについて、お話を伺った。


 
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丹後王国ブルワリー 代表取締役社長 中川正樹さん
株式会社 丹後王国ブルワリー 代表取締役社長 中川正樹さん

 
 
 

 
 


日常の食卓に合うビール作り


 丹後王国ブルワリーのビール製造は1997年からスタート。立ち上げから携わり、現在も現場で指揮をとるのは同社のヘッドブルワー、山口道生さん。「インターナショナルビアコンペティション2013」で金賞受賞、その他数々の受賞歴を持つビール職人だ。山口さんがビール製造に携わってきた25年の間にも、味わいの流行や消費者の好みは常に変化してきた。その変化に注目しながらも一番大切にしてきたのは「飽きが来ない、毎日でも飲みたくなるビール」を作ること。

 「最近のクラフトビール業界の傾向は、いかにホップの風味を引き出し、強い個性がある味わいにするかということに寄っていますが、丹後王国のビールはいわゆる昔からある王道のビールです」と山口さん。丹後王国では現在、12種類のビールが製造されている。そのどれもが、繊細で主張しすぎない香り、苦味、後味が豊かで飲みやすい味わいだ。使用する麦芽やホップは、山口さんが実際にそのまま自分で食べてみて味や香りを確かめ、ビールで表現したい味わいをイメージし、厳選してブレンドしている。

 ビール製造においては、作り手の考えがとても反映されやすい。使用する原料はもちろん、麦芽の粗さ、発酵時の水温管理、香り・苦味付けなどそれぞれの工程が少し変化するだけで、味にはっきりと違いが出る。長年の経験をもとに、山口さんの技術と感覚で仕上げていく。また近年では、園内で栽培したホップや、地元産のフルーツを使用したものなど、積極的に新しい商品開発も行なう。「イメージした味になるまで各工程で微調整を繰り返してきました。思う味わいが出ないことも度々ありました。新しい商品を開発するとなると今でもそれは同じです。これだ、という味になると、早く世に出したいと思えますね」と山口さんは振り返る。


 
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丹後王国ブルワリー ヘッドブルワー 山口道生さん
株式会社 丹後王国ブルワリー ヘッドブルワー 山口道生さん

 
 
 

 
使用している麦芽(上)とホップ(下)
使用している麦芽(上)とホップ(下)

 


王道ビール8種 七姫ラベルが人気の「TANGO KINGDOM Beer®️」


 「七姫ラベルの『TANGO KINGDOM Beer®️』は、セットで購入して頂き、1日1本、毎日の食事と合わせてテイスティングして頂きたいと想い作ったシリーズです」と中川さんはおすすめする。

・マイスター:京丹後市弥栄町産コシヒカリを使い、口当たりまろやかに仕上げたビール。塩をベースにしたお料理に。

・ピルスナー:京丹後で最初に作ったビール。スタンダードな味わいながら、苦味を抑えた丹後オリジナルの味わい。

・スモーク:スモークビール発祥のドイツ バンベルグ産の麦芽を使用。燻製料理との相性が良い。

・バイツェン:バナナのような甘味ある香りが特徴。フルーツやサラダ等、ライトな食事にも合わせて楽しめる。

・ロンドンエール:はっきりとした濃厚な味わい。醤油ベースの和食と合わせると旨味が引き立つ。

・アンバー:どっしりした味わいと苦味が贅沢なビール。味噌ベースの料理に合わせるのがおすすめ。

・メルツェン:オクトーバーフェストで飲まれるメインのビール。ソーセージなど、肉料理がすすむ喉越しの良いビール。

・IPA:ホップの香りが豊かで苦味があり、スパイスを使用したエスニック料理によく合う。

(写真左から順)


 
 
 

 
 
 

 


2022年、新たに生まれたマスカットビール「Kyo Tango Shine Beer」


 豊かなフルーツの産地でもある京丹後。丹後王国のマスカットビールは、京丹後産の規格外のシャインマスカット果実を副原料として使用している。マイスターベースにフルーティさが加わり、ライトに楽しんで頂ける。まずは一口、口に含んだ瞬間に優しく広がる柔らかなマスカットの香りを味わってみて欲しい。サラダや和食などと合わせるのもおすすめだ。「京丹後の食材にはいろいろな切り口で活かせる良さがあります。食品業者としては規格外品のフードロスの改善にも目を向けて、今後は季節ごとに梨やメロンでも試作をしてみたいですね」と中川さんは話してくれた。


 
 
 

 

丹後王国「食のみやこ」園内で栽培したホップ100%のビールがデビュー。「TK100 Fresh HOP MEISTER
-green-」


 同社では、「原材料も丹後地域産のビールを作りたい」という想いで、2019年から園内でのホップ栽培をスタートした。初めてのホップ栽培では気候の影響や手入れに苦労しながら試行錯誤。3年目となった2021年、やっとビールを作れる量のホップが実り、2000本限定で「TK100 Fresh HOP MEISTER -green-」を販売することができた。

 年に1度だけ収穫ができる摘みたてのフレッシュホップの良さを活かすため、朝に摘んだホップはその日の昼に仕込む。そうして出来上がるビールは、爽やかなフレッシュホップの香りが華やかで、同社内でも全員が「今までのビールで一番美味しい!」と声を揃えるほどだ。マイスターベースでまろやかな味わいにプラスされたホップの香りが、料理の旨みを引き立てる。


 
 
 

 
丹後王国敷地内で自家栽培されているホップ
丹後王国敷地内で自家栽培されているホップ

 


ファンの声に応え続けるビール作りを


 日本各地に卸すようになってから、「丹後地域でビールが作られている」という認知も少しずつ広まり、リピーターを獲得してきた。「クセが強すぎず、日常に取り入れやすく飲みやすいところが好き」というファンの声が多く届く。今まで続けてきた、“流行に揺るがない、日常に寄り添うビール”を作り続けていく。

 「地域商社としての強みを生かし、丹後の食と併せたPRに力を入れていきたいです。日本各地で知ってもらい、いつか丹後に足を運んでくれるような仕掛け作りをしたいと考えています」と中川さんは語ってくれた。毎日の楽しみや、ちょっと贅沢したい日に。ぜひ丹後王国ブルワリーのビールを、丹後食材と共に食卓で楽しんでみて欲しい。自然豊かな丹後の四季を感じられるはず。