特集

2021.10.06

京丹後の自然から生まれる、ロイヤルメリーの百花蜜

 京丹後市網野町に位置する浜詰区は、「夕日ヶ浦」と呼ばれる海に面した自然豊かな地域だ。夏は海水浴、冬は松葉ガニを求めて多くの観光客が訪れる。そんな夕日ヶ浦のビーチから少し歩くと見えてくるのは、地元でも人気店の有限会社酪ママ工房が営むソフトクリーム&ジェラート専門店「ロイヤルメリー」だ。店内を覗くと、色とりどり並ぶアイスクリームとともに、鮮やかな黄金色が美しい蜂蜜が販売されている。「夏はもちろんアイスクリームがよく売れますが、こちらの蜂蜜も当店のイチオシです」と話す店主で養蜂家の野村 多恵子さんに、蜂蜜づくりについて伺った。



ロイヤルメリーからすぐ近くの夕日ヶ浦ビーチ
ロイヤルメリーからすぐ近くの夕日ヶ浦ビーチ


「もったいない」から始まったロイヤルメリー

 野村さんが(有)酪ママ工房を立ち上げたのは、平成10年のこと。野村さんの嫁ぎ先では酪農を営んでおり、当時はその仕事に携わっていた。その頃京丹後地域では牛乳の計画生産が活発で、牛乳の生産調整が行われていた。生産調整のために廃棄される牛乳を前に、「美味しい牛乳を捨ててしまうのはもったいない」という気持ちが大きくなった。そこで、牛乳を美味しく活用するため、野村さんを含む地域内の酪農家の婦人メンバー4名で、(有)酪ママ工房を立ち上げてアイスクリームの製造と販売を始めた。お店をオープンした当時は1日1000人も訪れるほどの盛況ぶりだったという。「とても忙しかったですが、美味しいと言っていただける商品を作ることができ、本当に嬉しかったのを覚えています」と、野村さんは当時を振り返る。
 酪ママ工房設立から8年、店舗の移転に伴い新たに現在のロイヤルメリーの店舗をオープンした。ずっとこだわってきた「自然のままの美味しさ」を届けるために、京丹後の地を生かした新しい商品を作れないかと常に考えていた野村さん。当時は、健康・美容の業界で「巣蜜」が流行し始めていた。野村さんは、「これだ!蜂蜜を作ってみよう」と思い立ち、すぐに繋がりがあった養蜂場へ連絡し、養蜂業のノウハウを1年間を通して学んだ。京丹後の自然を最大限活用できるスタイルで生産しよう、との想いで試行錯誤を重ねた。



豊かにたっぷり詰まった、採れたての蜂蜜
豊かにたっぷり詰まった、採れたての蜂蜜


養蜂場での作業も、野村さん自ら行なう。
養蜂場での作業も、野村さん自ら行なう。




ロイヤルメリーこだわりの100%純粋百花蜜

 ロイヤルメリーの蜂蜜は、店舗からほど近い、海を眺める農場の一角を使って生産している。「京丹後は四季がはっきりしているので、その変化が蜂蜜にも表れます」と、野村さん。蜂蜜の蜜源となる花は、春ならサクラやアカシア、夏なら栗やカラスザンショウなど多種多様で、蜂蜜の色味や味わいにも変化をもたらす。さわやかな透明色から濃い黄色までさまざまだ。また、蜂蜜生産のオフシーズンとなる冬は、一般的な養蜂場ではミツバチの越冬のために砂糖水などを与えるところも多いが、ロイヤルメリーではそういったことはせず、あえてできる限り自然の力で育てている。「蜂蜜生産を始めてから、本当にいろんなことがありました。熊に巣箱を荒らされ蜂蜜を食べられたり、できる蜂蜜の量が不安定だったり。その度に勉強させてもらってますね」と野村さんは微笑む。
 ロイヤルメリーの蜂蜜の一番の特徴は、非加熱の生蜂蜜であること。実は一般的に販売されている蜂蜜のほとんどが、加熱処理をされている。加熱処理をする最大の理由は、蜂蜜を大量生産するため。成熟していない蜂蜜を早めに絞り、加熱して水分を飛ばすことで甘味を強める。本来、蜂蜜が巣箱の中で完熟することができればその必要はないため、ロイヤルメリーでは加熱処理をせずに、より花の香りのような華やかな風味のある蜂蜜を提供している。「たくさん作ってたくさん売ることよりも、より良いものを丁寧に作って喜んでもらえる方が、私たちにとっては大切ですね」と野村さんは話す。



巣蜜から溢れ出す蜂蜜の輝きが美しい。
巣蜜から溢れ出す蜂蜜の輝きが美しい。


一番人気は、巣蜜がそのまま入っているコムハニーソフトクリーム
一番人気は、巣蜜がそのまま入っているコムハニーソフトクリーム




一口食べると華やかに広がる香りを楽しんで

 ロイヤルメリーの一押しは、蜂蜜がたっぷり詰まり美しい黄金色に輝く贅沢な巣蜜。この巣蜜をたっぷり乗せたコムハニーソフトクリームは、たくさんのお客様が何度もリピートするほどの1番人気の商品だ。蜂蜜そのものにビタミン、ミネラルなど150種以上の栄養素が豊富に含まれており、疲労回復にも良いとされている。その中でも特に巣蜜においては、「天然の抗菌物質」とも呼ばれるプロポリスが主な成分で、真菌類やウイルスの繁殖を抑える働きがある。健康や美容にも効果が期待できることから、老若男女関わらず、手にとってみて欲しい。
 家庭でも、そのまま食べるのはもちろん、ヨーグルトと一緒に食べたりパンに乗せたりと、さまざまな食べ方で楽しめる。「養蜂家に病気なし、と言われているくらいです。私も本当に元気で(笑)。ぜひ1日の中で蜂蜜を取り入れる習慣を作ってみて欲しいですね」と野村さんは笑って話してくれた。
 春から夏にかけては、蜂蜜の収穫体験も行なっている。京丹後の自然の中で、環境や蜂蜜について説明を受けながら、採れたての蜂蜜を味わえるのはとても貴重な体験になるに違いない。



ロイヤルメリーを営む野村さん親子。笑顔でお客様をお待ちしています。
ロイヤルメリーを営む野村さん親子。笑顔でお客様をお待ちしています。


京丹後で、ずっと変わらず良いものを届けたい

 アイスクリームから始まり、商品開発や養蜂と、今までたくさんのことに挑戦してきたロイヤルメリー。その中で変わらずに大切にしてきたのは、「自然の美味しさを届けて、お客様に喜んで欲しい」という想いだ。お客様が食べて喜ぶ姿を想像しながら商品開発をしている時が一番楽しいという。そして、アイスクリームに使うフルーツの仕入れ先である地元農家との繋がりや、以前より移動販売で出店してきたイベントの縁をとても大切にしている。「蜂蜜もアイスクリームも、食べてくれるお客様や協力し合える人々がいるからこそ、広がっていける。その感謝を持ち続けて、作っていきたいです」と野村さんは微笑む。
 京丹後市を訪れる際には、海沿いのドライブの休憩にぜひロイヤルメリーを訪れてみて欲しい。笑顔になれる美味しい蜂蜜と優しい野村さんの笑顔が迎えてくれるはず。