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2021.07.06

寝るのが楽しみになるようなふとんを作り続けるふとんの石堂

 京丹後市網野町にあるふとんの石堂。機音が聞こえる住宅地に位置し、保育園へ向かう親子や近所で働く人々の姿が見え、穏やかな暮らしの時間が流れている。石堂雄一さんは、3代70年に渡り「まちのふとん屋」として地域の方の眠りに寄り添っている。一番の自慢は、原綿(げんめん)の仕入から布団の製造までを一貫して行なっていること。あまり知られていないが、小さなふとん屋が原綿を仕入れ、中綿(なかわた)を手作りするのはとても珍しいこと。さらに、全てお客様の睡眠の悩みや好みに合わせて製造するオーダーメイドだ。「今では羽毛布団や化学繊維製のふとんが多くなっていますが、日本の風土に合った木綿(もめん)わた入りのふとんを今こそお勧めしたいです」と、雄一さん。「人生の三分の一はふとんの中で過ごす」皆さんの大切な睡眠に寄り添って、ふとんの中に入るのが楽しみになるようなふとん作りを目指しているという手作りのふとんに込められた想いと技術について、お話を伺った。



ふとんの石堂3代目店主 石堂雄一さん。
ふとんの石堂3代目店主 石堂雄一さん。




石堂さん夫妻が進んだふとん作りの道

 6人兄弟の長男として生まれた雄一さんは、小さい頃から「お前がふとん屋を継ぐんだ」と創業者である祖父に言われ育てられた。雄一さん自身、迷うことなくその道に進んだ。高校卒業後は、東京にある職業訓練校でふとん作りの基礎を学ぶ。「授業においても寮生活においても、そこの先生がとにかく厳しかったです。基本から一つでも外れることを許さない人でした。でも、今思えば、愚直な先生にきっちりと育てられたお陰で、私も先生のような人間になっちゃいました」と笑う。
 職業訓練校を卒業後は実家に戻り、ふとん作りに汗を流す祖父と父の背を追いかけた。基礎はしっかりと学んだが、ふとん作りもふとん屋の数だけ方法がある。ふとんの石堂にも、独自に受け継がれている技術が至るところに存在し、それらを一つずつ丁寧に身に付けた。「先代から教わること以外にも、こうした方がより良くなると思ったことは積極的に取り入れました。うちのふとんは、代々そうして品質を上げてきました」
 雄一さんの妻である典子さんも、共にふとん作りに携わる。「私の実家も網野町にあり、丹後ちりめんを織る機屋でした。だからかどうかは分かりませんが、若い時から生地を縫ったり染色したりすることが大好きでした。ふとん作りは天職だと思っています」と典子さん。オーダーメイドのヒアリングなど、お客様とのコミュニケーションも典子さんが担当しており「ふとんに関する悩みや好みを聞いているうちに、お互いに人柄が見えてくるようで、この人のために作る、という気持ちで仕事ができます」と笑って話してくれた。



妻の石堂典子さん。
妻の石堂典子さん。




譲れないこだわりは、見えないところにある

 「ふとんは綿入れ口を閉じてしまえば中が見えなくなりますが、その中が一番肝心なんです」と、雄一さん。高圧圧縮した250㎏の塊で入荷するインド綿、メキシコ綿、化繊綿など多様な原綿の特徴を生かし、用途にあわせた配合と厚さで中綿を作っていく。綿入れ作業は、掛ふとんならふとん全体の厚みが一定になるように、敷ふとんなら体重がかかる部分に多めに中綿を重ねる、わたとわたの重なりの継ぎ目を滑らかにするといったように、手のひら一つの感覚で重ね合わせていく繊細な作業だ。「角」も重要なポイントの一つ。「座布団を見ればそのふとん屋の技量が全て分かります」と雄一さん。よく見ると、ふとんの石堂の座布団はピンと角が立ち座布団自体が床面に吸い付くようにフィットしている。
 最後の綴じの工程にもたくさんの技術が詰まっている。掛ふとんの綴じは45か所以上(一般的には20~30か所)、敷ふとんは26か所以上(一般的には10~16か所)と数多く綴じている。綴じ箇所が多いこと、綴じ目がきれいに並んでいることから、中綿と側生地との歪みがなく良い状態のまま使用することが出来る。全ての工程がきっちりと行われて完成するふとんは、ふっくらとしながらしなやかなハリがあり芸術品のように美しい。以前作ったふとんがぺちゃんこになってメンテナンスで返ってくると、作った時に計算したとおり中綿が凹凸なく均等にへたっている。「良い仕事が出来ていると感じる瞬間です」と雄一さんは微笑んだ。



中綿の形と厚みを熟練の技術で整えていく。
中綿の形と厚みを熟練の技術で整えていく。


角まで入念に。「ここでふとんの美しい形が決まります」
角まで入念に。「ここでふとんの美しい形が決まります」




「今だからこそ、木綿わた入りのふとんを」

 「本来、日本の高温多湿気候には木綿わた入りのふとんが理にかなっているんですよ」と典子さん。人は寝ている間にコップ一杯分の汗をかく。その水分を素早く吸収、発散してくれるのが上質の木綿わたが入ったふとんだ。上質の木綿わたとは、掛ふとんなら繊維が長くしなやかな熟成綿、敷ふとんなら太く弾力がありへたり難い熟成綿のことを指す。しかし、これらの熟成綿は糸に加工し織物にしていくのが通常で、糸にならなかった短い繊維の部分がふとんわたに加工されている。ふとんの石堂では熟成綿を贅沢にふとん綿として使用するため、出来上がった製品から出るホコリは少ない。空気をより沢山含むため冬は暖かく、また調湿機能が抜群なため暑い時期には爽やかなのだ。
 中でもふとんの石堂で一番お勧めするのが「オーガニックコットン肌掛ふとん」。驚くのはその掛け心地。中綿にはトルコ産の柔らかくしなやかな超長繊維のオーガニックコットン100%が使用されている。また、側生地にもこだわり世界規格の認証(※1)を受けたオーガニックコットン和晒し(※2)ダブルガーゼを使用。「アトピー、アレルギー、敏感肌の方にお勧めしたいのはもちろん、赤ちゃんが口に入れても大丈夫なふとんです。どんな人にも安心、安全に使用してほしいという想いが詰まっています」と典子さんは話す。程よい暖かさを感じるが、湿気を逃がしてくれるためサラリと心地よい。気温が上がる夏はもちろん、毛布や他のふとんと合わせることで通年使用できる。気持ちよさが一年中楽しめて重宝しそうだ。 

(※1)エコテックス規格100 製品分類Ⅰを取得。ベビー用品に関するもので、乳幼児かなめたり吸ったりしても安全であることを証する、最も厳しい安全性基準。
(※2)和晒し:薬品をできるだけ使わずに48時間かけて晒すため、仕上がりの肌触りが非常に柔らかいのが特徴。
        (和晒しに対し、洋晒しは薬品を使用して40分で晒す。仕上がりは硬めの肌触りになる。)



 
 


 
 


ふるさと納税にも出品のオーガニックコットン肌掛ふとん。優しい肌触りで、やめられなくなる心地よさ。
ふるさと納税にも出品のオーガニックコットン肌掛ふとん。優しい肌触りで、やめられなくなる心地よさ。




毎日使うものだからこそ、お客さんの日常に寄り添うふとんを作りたい

 昔から、地域密着でふとん作りをしてきたふとんの石堂。「自然と食が豊かな京丹後市に生まれ育ち、そこで暮らす人々の「住」を支える仕事に携わることで地域に貢献できるのは嬉しいことです」と雄一さん。
 また近年では、他府県のお客様からの問い合わせやオーダーメイドの注文が入るようになった。離れた地でもコミュニケーションを重ね、その要望に応えるべく一つ一つ丁寧に作られたふとんは、きっと生活を豊かにしてくれるものに違いない。ふとんの石堂の「ふとんに入るのが楽しみになるようなふとん」を選んでみてほしい。



ふとんの石堂の皆さん。「ぜひふとんの石堂のふとんを手に取ってみて下さいね」
ふとんの石堂の皆さん。「ぜひふとんの石堂のふとんを手に取ってみて下さいね」