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2021.09.02

ジャージー牛の恵みを一番美味しい形で。ミルク工房そら

 京丹後市久美浜町の穏やかで自然豊かな田園風景に囲まれた、ミルク工房そら。(有)丹後ジャージ牧場が「牛乳の美味しさを伝えたい」という想いでオープンさせた手作り乳製品が楽しめるお店だ。地元でとれたフルーツなどを使ったジェラートやアイスは色鮮やかで種類も豊富。また、ナチュラルチーズをふんだんに使って特注のナポリ窯で焼き上げたピッツァ(土日祝のみ)を目当てに家族連れ、観光客などさまざまな人が集う憩いの場となっている。店内には他にもチーズやバター、焼き菓子などのさまざまな商品が並び、ひとくち食べれば子どもも大人も思わず笑顔がこぼれる。

 ミルク工房そらの製品の一番の特長は、隣接する牛舎「丹後ジャージー牧場」で育つ25頭のジャージー牛から毎日朝と夕方に搾る新鮮なジャージー牛乳のみを使用し、他の牛乳は一切ブレンドしていないことだ。「そらの商品を食べて、牛のこと、地域のことを知って欲しい。どんな場所で、どんな思いで作っているのかが少しでも伝われば」と語る、ミルク工房そらの平林 学さんにお話を伺った。



ミルク工房そらがある、京丹後市久美浜町。豊かで穏やかな自然と地域に囲まれている。
ミルク工房そらがある、京丹後市久美浜町。豊かで穏やかな自然と地域に囲まれている。


お話を伺った平林 学さん。
お話を伺った平林 学さん。




ミルク工房そらの役割

 平成12年に設立した「ミルク工房そら」は、あえて牛舎の隣に建てた。ミルク工房そらが一番大切にしている、『どのように牛乳ができているかを地元の子どもたちに知ってもらうこと』、『その牛乳を余すことなく一番美味しい形でお客様に届けること』を実現していくためだった。「ミルク工房そらに来てくれたら、牛乳を出してくれるジャージー牛をすぐ近くで見ることができます。牛が餌を食べているところ、寝ているところ、排泄しているところも(笑)。牛が出産しているのをお客様が従業員に教えてくれたこともありました。牛乳が命ある生き物から作られるという当たり前のことを知った上で、味わって欲しいです」と平林さん。
 実際に、ミルク工房そらを訪れるお客様の中には小さな子どもを連れた家族も多い。子どもたちは美味しいアイスクリームを手に、間近で牛や世話をする従業員たちの姿を見る。牛を指さして「牛さんもご飯食べてるよ!」と声を弾ませる。そんな会話から生まれる親子のコミュニケーションを大切にして欲しいとミルク工房そらは考える。



 
 


 
 


 
 




家族のように大切な牛たちから頂く牛乳で、捨てるところがない商品づくりを

 毎朝6時と夕方4時から行われる搾乳作業。「ここで酪農を学びたい」と全国各地からやってきた従業員が、手際よく、そして優しく搾乳を進める。「従業員たちの牛への愛情はものすごいですよ」と、平林さん。搾乳作業と同時に、牛の顔つきや餌を食べる様子、体調や搾乳される牛乳の量などをきめ細やかに観察し、僅かな変化も見逃さない。一頭一頭を大切に、丁寧に管理しているからこそ、より美味しい牛乳を安定的に生産することができるのだ。
 牛乳の味は、牛が育つ環境で大きく変化する。中でも特に大事なのは、牛が飲む水。ミルク工房そらの牛が飲んでいるのは、同地域を流れる地下水だ。山々から流れでたミネラルを豊富に含んだ地下水を汲み上げ、使用している。まさに、豊かな久美浜町の風土が育てる牛乳の味なのだ。
 ミルク工房そらには数々の商品があるが、それらは全て「牛乳の全部を使って、その美味しさを知って欲しい」という想いから生まれたものばかり。例えばアイスクリームやバターの製造工程では、それらに使われない脱脂乳ができる。廃棄してしまう工房もあるが、ミルク工房そらでは脱脂乳に乳酸菌を加えた飲料「ミルクピス」を作った。甘酸っぱい中にも濃厚な甘さがあって人気商品となっている一品だ。
他にもミルク工房の設立当初から、余剰となる牛乳はソフトクリームに、チーズならジェラートなどに使うなど、長年にわたって、フードロスをしないための商品開発を行なっており、温かくて優しいものづくりの文化が根付いている。



搾りたてほやほやのジャージー牛乳
搾りたてほやほやのジャージー牛乳


牛舎で採れた牛乳はすぐに工房へ運び加工工程へ
牛舎で採れた牛乳はすぐに工房へ運び加工工程へ


朝一番から、新鮮なジャージー牛乳を使ってジェラートやバターを作る。
朝一番から、新鮮なジャージー牛乳を使ってジェラートやバターを作る。


出来立てのふわふわなミルクのジェラート。始めて以来、変わらない定番商品。
出来立てのふわふわなミルクのジェラート。始めて以来、変わらない定番商品。




届けたいのは、お母さんの優しさのような温かく優しい味

 ミルク工房そらには様々な商品があるが、全てに共通しているのは「牛乳の味が一番活きる味わい」を突き詰めて考えていることだ。ジェラートに使うフルーツは地元農家から季節ごとに仕入れ、ピッツァに乗せる野菜は工房の敷地内で自社栽培するものを使う。「牛乳と同様に、使う材料も出来るだけ地元で育ったものを使いたいと思っています。それが一番美味しくなる組み合わせなんですよ」と平林さん。
 それぞれの商品についてお話を伺っている中で、平林さんが繰り返す言葉があった。「ミルク工房そらのイメージは、お母さんのように温かくて優しく、ほっこりするような味わい」という言葉だ。素材の味を最大限に活かした商品は、毎日の朝食や休憩時のデザート、帰宅後にくつろぐ時間など、お客様の日常の中に自然に寄り添う。「アイスクリームでもプリンでも、甘すぎずさっぱりしていて、思わず2個目に手が出てしまう。そんなシーンを思い浮かべながら提供しているんですよ」と、商品見つめながら平林さんは話してくれた。



ジャージーアイス:創業時から変わらない優しい味わいで牛乳の味を楽しんでいただけます。人気で定番の6種類入り。
ジャージーアイス:創業時から変わらない優しい味わいで牛乳の味を楽しんでいただけます。人気で定番の6種類入り。


ジャージープリン:ミルク感たっぷりの、ふわふわとろとろな食感。甘すぎず、牛乳と卵の豊かな味わい。
ジャージープリン:ミルク感たっぷりの、ふわふわとろとろな食感。甘すぎず、牛乳と卵の豊かな味わい。


牧場のチーズケーキ:とれたての生クリームをふんだんに使用した濃厚ながらさっぱりした味わいのチーズケーキ。
牧場のチーズケーキ:とれたての生クリームをふんだんに使用した濃厚ながらさっぱりした味わいのチーズケーキ。


牧場の石窯ピッツァ マルゲリータ:フレッシュモッツァレラをたっぷり乗せた1枚。チーズはもちろん、ピザ生地も野菜も自家製。
牧場の石窯ピッツァ マルゲリータ:フレッシュモッツァレラをたっぷり乗せた1枚。チーズはもちろん、ピザ生地も野菜も自家製。


 
 


フロマージュとミルクバターのセット:フロマージュはワインのおともに、バターはパンに塗ったりパスタに添えて。
フロマージュとミルクバターのセット:フロマージュはワインのおともに、バターはパンに塗ったりパスタに添えて。




京丹後で酪農を行なうということ

 「豊かな自然と豊かな人々が集う地域だからこそ、酪農を通して京丹後の食文化に貢献したい」と話す平林さん。お客様に牛の姿を見てもらうのはもちろん、地域の小学生たちの牧場・工房見学や、京丹後内外の食のイベントにも積極的に取り組み、参加してきた。その結果として、地元に根差すさまざまな異業種の人々とつながることができたという。レストランへの食材提供や農家との繋がりはもちろん、若手の建築士や大工に工房のオープンデッキやアーチを制作してもらったり、デザイナーにチラシデザインを依頼したりと、その輪はどんどん大きくなっている。「やっぱり良いものは一人では作れないんです。それは皆一緒なんですよね。だから同じ思いを持った人たちで繋がって、意見を頂いたり発信したり。お互いの想いが形になる瞬間をお互いに喜べたら本当に嬉しいです」と地域との繋がりを重要視する平林さん。
 ミルク工房そらの、美味しいものづくりとそれを伝えていくための活動には、京丹後地域への想いが散りばめられている。ぜひ、その想いを商品から感じ取り、いつかミルク工房そらに訪れてみてほしい。豊かな自然と元気なジャージー牛たちが迎えてくれるに違いない。



豊かな自然の中で隣り合う、ミルク工房そらと丹後ジャージー牧場。
豊かな自然の中で隣り合う、ミルク工房そらと丹後ジャージー牧場。